2009年度 KPOS訪問記

九州大学大学院 整形外科学
秋山 美緒

2009年12月に松山にて行われた第20回日本小児整形外科学会において最優秀ポスター賞を頂き、KPOS-TPOS-JPOA exchange fellowshipに選任され、2010年10月の韓国小児整形外科学会(KPOS)へ参加させていただきました。その10月13日から16日までのソウル訪問に関して報告いたします。

出発に先立て日本小児整形外科学会前国際委員長の亀ヶ谷琴先生、及び国際委員長の川端秀彦先生にSEOUL NATIONAL UNIVERSITYのTAE-JOON CHO先生とYONSEI UNIVERSITYのHYUN WOO KIM先生を紹介していただきました。
家庭の事情で韓国での長期滞在が困難であったにも関わらず、快く濃密なスケジュールを組んでいただき、充実した韓国訪問をさせていただきました。さらに、英語が不得手で女性であることをご配慮下さり、事前に空港へ迎えに来て下さる女性の先生を紹介していだたけ、安心して日本を発つことが出来ました。

10月12日正午に福岡空港を出発し、約1時間のFLIGHTでIncheon空港に着きました。入国審査を終えドキドキしながら到着ゲートに進むと、「Dr. AKIYAMA」と書かれたボードを持った女性が出迎えてくれました。事前に連絡を交わしたレジデント8年目のDr. Sunyoung Jooです。ご自身の事を「old fashion」と称する知的な女性の運転でSeoul市内のYONSEI大学へ向かいました。韓国のハイウェイの標識はハングル語表記しか無く、レンタカー借りて観光するのは難しいなと言うのが韓国の第一印象でした。車の中ではSunyoung先生と整形外科の女医事情についてお話ししました。

韓国では整形外科の女性医師は国内全体で25名程度だそうで、日本同様、力仕事というイメージが強く女性医師が選択することは少ないそうです。現在、日本では女性の整形外科医が増えていること、九州大学の医局内だけでも十数名いることを話すと驚いていました。約一時間でSeoul市内にあるYONSEI大学に到着しました。YONSEI大学は1885年韓国で最初に設立された大学で、山一つがその敷地でした(写真1)。山全体がキャンパスであり、大学本体、大学病院、付属機関もその山の一部にありました。そのような伝統のある大学のGuest Roomに滞在させて頂きました。部屋に荷物を置きほっとしたのも束の間、すぐさまYONSEI大学付属病院(Severance Hospital)、及び付属の子供病院(Severance Children’s Hospital)を施設見学させて頂きました。Severance病院は5つの分院を同じ敷地内に持っていました。メインの建物は2005年に建て変わった直後でとても大きく、きれいな建物です。子供病院の玄関には動くロボットが出迎えてくれ、各フロアーには子供が喜びそうな装飾にあふれ大人の私でもワクワクするような病院でした(写真2、3)。

さらに隣接する大学病院は有名な建築家によってデザインされていて大きなエントランスに地下5階まである駐車場、展望の良いVIPルームまであり、その規模の大きさや充実した設備におどろかされました。VIPルームには韓国の大統領や俳優ぺ・ヨンジュンなどが滞在したこともあるそうで、VIPルームと同じフロアーに人間ドックが設けてありました。この日は、Dr. Hyun Woo KimとDr. Sunyoung Jooと共に大学の近くの韓国料理を頂きました(写真4)。

10月13日。この日の午前中には韓国滞在中、唯一観光させて頂きました。エスコートして下さったのは、整形外科レジデント2年目のDr. Yoon Ji Youngでした。YONSEI大学のレジデントはほとんど
病院建物内の寮で暮らし24時間体勢の待機をしているそうです。日本のレジデントと同じくらい忙しい彼女はこの日も朝から緊急手術を終えて観光に連れて行ってくれました。午前中の2時間半という時間を使い、地下鉄に乗って昌徳宮へ行きました(写真5)。韓国の寺院には日本人観光客が多く、韓国にいることを忘れてしまいそうでしたが、一人では怖くて乗れない地下鉄や、通勤時間帯の街並みを味わうことが出来、貴重な体験となりました。午後からは、また地下鉄とバスを乗り継いでKOPSの会場、Grand Hiltonへ向かいました。

ホテルで昼食を取りスライドチェックを済ませるとすぐに症例検討会が始まりました。まず最初に留学していた先生の報告がありました。それに続き、私のDDHに関する演題と、National University of SingaporeのJames Hui先生のPelvic Osteotimiesに関する演題、Washington UniversityのPerry Schonecker先生のFoot Deformityに関する講演を含む24題の発表がありました(写真6)。頂いた抄録はほとんど韓国語で何に関する演題なのかわからず、不安と緊張でいっぱいでしたが、発表はほとんど英語でおこなわれ、なんとか何を討論されるのかが解り、ほっとしました。それぞれの演題で活発な討論が行われていました。白熱するにつれ、英語の討論が韓国語に変わって

いき、やはりどこの国でも母国語が一番なのかなと感じました。途中でコヒーブレイクもあり、フロアーでも活発な討論が繰り広げられていました。英語が不得手で緊張している私に沢山の先生方が話しかけて下さり、日本でも韓国でも小児整形を専門とされている先生の優しさを実感しました。不安と緊張でいっぱいで余裕のない私はKPOSミーティングの風景をカメラに納めるのを忘れてしまいました。ミーティングが終わるとKPOSメンバーの先生方と一緒に韓国焼き肉を頂きました。ここでも、沢山の先生方に話しかけて頂きました。中でもChonnam National University HospitalのSung-Taek Jung先生は以前、日本で暮らしていた事もあるらしく、少しだけ日本語でお話しして下さいました。また、Seoul National UniversityのYoo, Woo-Joon先生と股関節の形状と歩容・可動域について英語でディスカッション出来たのは、私にとってとても楽しく、これからも研究と英会話を頑張ろうと思える出来事でした。

10月14日は第54回韓国整形外科学会に出席しました。前日に観光案内して下さったYoon先生と共に今度はタクシーで会場へ向かいました。ここでも、私が驚いたのはタクシーのドアを自分で開けなければならないことです。ドアが開くのをじっと待っていた私をYoon先生は少しびっくりされていました。英語が不得手で日本ではドライバーがドアを開けてくれることをタクシー乗車中の時間ほとんどを使って説明しました。韓国整形外科学会は韓国の整形外科の学会で一番大きな学会と聞いていました。会場は全部で5つあり、所々に英語のセッションがありました。St. Vincent Medical CenterのDr. Thomas p SchmalzriedやWashington UniversityのPerry Schonecker先生のレクチャーや小児整形領域の英語や韓国語のセッションに参加しました。ランチの時間帯にランチョンセミナーがあると思っていると、セミナーはなく、ランチのお弁当とお味噌汁が配られました。中にはお刺身もあり、辛いソースをつけて食べるという不思議なスタイルで後ろの席の韓国の先生が他の国の方にIt’s Japanese Style!と紹介していて衝撃を受けました。夕方からはKPOSのコアメンバーの先生方、Washington UniversityのPerry Schonecker先生と中華料理を頂きました。ここでも緊張のあまり写真を取り損ねてしまいましたが、Perry Schonecker先生の奥様やSeoul National UniversityのTae-Joon Cho先生、京都府立医科大学の金先生がやさしくお話しして下さり、美味しい食事を楽しむことが出来ました。さらに、宿泊先のYONSEI大学に戻ると前述のYoon先生が大学周囲の街に連れ出して下さいました。大学の周囲には22時まで開いているデパートや深夜まで営業している居酒屋、薬局などで明るい街でした。日本と同じように若者であふれていました。その中でもスーパーマーケットに連れて行って貰い地元の人に紛れてお買い物を楽しみました。

10月15日は滞在最終日。YONSEI大学のGuest Roomの朝食を堪能し(写真7)、朝から学会会場へ向かい、英語のレクチャーを受け、合間にはレジデントの先生方とお茶をしながら整形外科事情についてお話を伺いました。日本では比較的若い関節症の患者さんには骨切り術を選択することが多いのですが、レジデントの先生方のお話では韓国では20代でも人工関節を選択することが多いとのことです。その後、昼過ぎの飛行機の時間に会わせてシャトルバスで帰路に着きました。
今回の韓国訪問は多くの先生方とディスカッションを持つ機会を持たせていただき、大変貴重な体験となりました。家庭の事情で長期滞在が出来ず、医療の現場を見学する事が出来なかった事がとても悔やまれますが、経験の浅い自分に国際的な経験をさせていただけた事をとてもありがたく思います。これから、研究・経験を積んでさらに発展していきたいと感じました。最後にこのような機会を与えて下さいました山本晴康前会長、亀ヶ谷琴前国際委員長、川端秀彦国際委員長をはじめとする日本整形外科学会の先生方、関係者の皆様に心よりお礼を申し上げます。