兵庫県立こども病院整形外科
薩摩真一
2008年6月4日から7日まで、韓国のチェジュ島において第7回アジア・太平洋整形外科学会;脊椎・小児整形外科部門合同学会 (The 7th Combined Congress of the Spine and Pediatric Sections, APOA)が開催された。同学会は、APOAの中の脊椎部門と小児整形外科部門が3年おきに合同で行なうものであり、前回は2005年台湾の台北市で開催された。今回、日本人として参加した1人として学会および開催地についての印象を綴る。
今学会のChairmanは、脊椎部門がJae-yoon Chung先生 (Chonnam National University Hospital)、小児部門がIn-Ho Choi先生 (Seoul National University Children’s Hospital)で韓国の先生お二方であった。
チェジュ島は大阪府の面積と同じぐらいの広さで南端はリゾートエリアとして新羅ホテル、ロッテホテル、ハイアットリージェンシーなど超高級ホテルが林立する地区であるが、今学会は島の北端にあり落ち着いた雰囲気の済州市ラマダプラザホテルで開催された。学会前日4日夕刻からのwelcome partyでは、会を主催された韓国の脊椎・小児整形外科部門から次々と歓迎の挨拶がなされた。わが国からもAPOA spine sectionのChairmanとして、日本小児整形外科学会の理事長でもある国分正一東北大学名誉教授が祝辞を述べられた。
翌5日から、小児整形外科部門ではCase Discussionを皮切りに3日間の本学会が始まった。日本からは千葉県こども病院整形外科の亀ヶ谷真琴先生が股関節などの症例を2~3紹介された。またその日のPlenary Lectureでは国分正一先生がNon-specific neck painのタイトルでその症候および局所ブロック法について中国の鍼灸術などを比較に出しながら講演をされ、フロアーからは多くの質問があった。午後からの -Foot other than clubfoot- のセッションでは浜西千秋近大整形外科教授がシンポジストとしてVertical & Oblique talus deformitiesのタイトルで発表された。
学会2日目にはアジア各国の小児整形外科事情と題したシンポジウムが持たれ、我が国からは亀ヶ谷真琴先生、その他インド、マレーシア、モンゴル、ベトナム、韓国の各代表が発表された。印象に残ったことの1つは日本にはなんと多くの小児整形外科医がいるのかというフロアーからの質問であった。裏を返せば、日本以外では定められたeducational trainingを積んだ整形外科医のみが小児整形外科医を標榜するという国が多く、我が国の小児整形外科分野の卒後教育システムに思いをはせる指摘であった。2つ目は小児整形外科分野のいわゆる後発国に対する韓国の積極的な働きかけを改めて実感したことであった。この点では我が国は先発国という安心感に胡坐をかいている場合ではなくアジアの各国に対してさらにアピールしていく必要があると感じた。Plenary Lectureでは福岡こども病院の藤井敏男先生がSprengel deformityの病態と手術的な治療法について講演をされた。
その日の夜には、Banquetが盛大に催され、韓国伝統のテコンドーとミュージカルダンスをフュージョンさせたアトラクションが会を盛り上げた。
さらに特筆すべきは3年後の2011年には本学会が岐阜で開催されることが紹介され、脊椎部門のChairmanを務められる岐阜大整形外科の清水克時教授が演壇に立ち日本と岐阜の紹介とともに演題募集をアピールされた。同時に小児部門のChaimanが亀ヶ谷真琴先生に決定されたことが紹介された。
今学会を総括すると小児部門は、Symposiumが9セッション37題、Free paperが13セッション77題、Posterが69題の計183題が採用された。全体的には運営もスムーズでよくまとまり、欧米諸国からも著明な小児整形外科医が集い、非常に一体感のあるすばらしい学会であった。そのなかで日本からの演題は、各々4, 10, 7の 計21題で、前回の台湾での学会に比べるとややactivityが落ちたように思われた。
3年後には本学会が日本で開催される予定でもあり、前述したように韓国やその他アジア各地の医師達の活躍を目前にした今、我々日本の小児整形外科医も個々の研鑽とともに、お互いが一丸となって全体としてのレベルを高めていく必要があると感じた。このことがアジア、ひいては世界のこどもたちの未来のために還元できる我々の使命であろう。