2013年度 TPOS訪問記

九州大学大学院 医学研究院 整形外科

河野裕介

 

KPOS-TPOS-JPOA exchange fellowshipとして、20131023日~28日に台湾を訪問しましたのでご報告いたします。

 

出発に先立ち、日本小児整形外科学会国際委員長の川端秀彦先生の仲介でKuang-Tien Genaral HospitalDr. Pen-Gang Chengを紹介していただき、彼に行程を調整していただきました。期間中、前半は台中を拠点にKuang-Tien Genaral Hospitalと高雄のKaohsiung Veteran General Hospialを訪問しました。後半は台北を拠点とし、Taiwan University Hospitalの訪問と、National Defense Medical Centerで開催されたTOA(Taiwan Orthopaedic Association)annual meetingに参加してきました。

 

1023日、福岡から2時間強で桃園国際空港へ到着しました。そこからDr. Chengの勤務する台中のKuang-Tien General Hospitalへ移動しました。ここは1913年に設立された台湾で最古の個人事業主による病院であり、約1300床もある大病院です(写真1,2)。

 

院内を案内して頂いた後に、院長のProf. Matthew Nai-Hwei Wangより彼らの業績の一部(痛みの持続するyoung adultの臼蓋形成不全に対するslotted acetabular augumentationの治療成績、Monteggia骨折の橈骨頭脱臼が遺残した陳旧例に対する尺骨骨切りによる橈骨頭等整復と靭帯再建の治療成績)を紹介していただきました。いずれにおいても見逃しによって問題となるケースがあり、Prof.Wangからは「日本ではDDHの健診制度が整っており羨ましい」とコメントを頂きました。初日の夕食はDr. Chengと台中の日本料理屋へ伺いました(写真3)。食事後、台中市街や夜市などを車で案内して頂きました。

 

 

1024日、AM7:40からのJournal Clubに参加しました。橈骨遠位端骨折に合併する舟状月状骨間靭帯損傷の診断に関する話題でした。また、Dr.Chengより比較的稀な外傷であるGaleazzi類似骨折における尺骨遠位骨端離開についてLectureを受けました。

背屈型と掌屈型に分類でき、前者は徒手整復が可能なのに対して後者はECUの介在で観血的整復が必要となることが多いという内容です(Traumatic Separation of the Distal Ulnar Physis in Children: A New classification for Displaced Volar-Flexion InjuriesというタイトルでJ Orthop Trauma.publishされています)。午後はDr.ChengHigh speed railという台湾の新幹線で高雄のKaohsiung Veterans General Hospitalを訪れ、Dr.Wei-Ning ChangGait laboratoryを見学しました(写真4)。脳性麻痺の歩行解析を行っている施設であり、患者にセンサーをつけて10台のカメラで撮影し、筋電図の解析、フットプリントの解析、歩容の解析などを通じて必要な術式を導き、確信を持って手術に望むことができるとのことでした。

その後、Dr.Changの車で左営蓮池潭、愛河など高雄市内の名所を案内して頂き、最後に訪れた小高い丘の上にある打狗英国領事館から見る夕陽はとても綺麗でした(写真5,6)。

 

1025日は新幹線で台北に移動し、National Taiwan University Hospitalへ向かいました。Prof.Ken-Nan Kuoは第23回の本学会にてClubfoot perspectiveと題して御講演されております。午前は手術の見学でした。朝一はDr.Wang Ting-Mingの執刀するDDHに対するmodified Ganz osteotomyDr.Wu Kuan-Wenの執刀するCPclub footの手術が並列で行われました。Prof.Kuoはいずれの部屋でも適宜アドバイスをされています(写真7)。

 


Ganz osteotomy
においては被覆の改善だけでなく、骨頭の内方化の重要性を強調されました。また、Chang Gung Memorial Hospitalに来られていた千葉の森田先生と偶然にも手術室でお会いすることができました(写真8)。日本語が恋しくなり始めていたこともあり、とても安心したことを思い出します。

 

 

午後はProf.Kuoの外来を見学しました(写真9)。待合室は患者で溢れていましたが、患者・家族に非常に丁寧に接していたことが印象的です。Prof.Kuoの外来には数人の若手医師が付き、問診をとったり、Prof.Kuoの診察所見を英語でカルテに記入したりしていました。その日の夜は、学会のために台北に来られたDr.Chengと再び合流し、三越の台湾料理店でディナーを頂きました。

 

 


1026日はTOAの第65annual meetingに参加しました(写真10)。プレゼンテーションは中国語ですが、すべての発表でスライドが英語であったことが印象的であり、また刺激にもなりました。小児整形のセッションでは口演の演題数は15と多くはありませんでしたが、SCEFDDHACL損傷、CP、思春期特発性側弯、外傷など多岐にわたる内容でした。日本ではあまり見られないCrossfireというディベートのようなセッションでは、modular neckの是非についてそれぞれの立場からのプレゼンテーションと、その後の活発な討論が印象に残りました。
その日のディナーはProf.Kuoご夫妻、Dr.Wangご夫妻、Dr.Wuご夫妻、森田先生と真的好海鮮餐廳で頂きました(写真11)。

 

 

 

1027日の午前中は学会に参加し、午後はDr.Chengの息子さん(現在アメリカ在住ですが、たまたま台湾へ帰省していたようです)に台北市内を案内してもらいました。この日最後に訪れた、猫空という場所には全長4033mのロープエェイがあり、標高があがるにつれ台北の街を遠くに見下ろすことができます。台湾でも有数のお茶の産地であり、山の斜面には茶畑が広がっていました。鉄観音茶と呼ばれるお茶が有名だそうです。茶店では茶葉を注文し、出された茶器セットを使って自分でお茶を淹れる形式で、余った茶葉は持ち帰ることができます。映画のワンシーンのような夕暮れ時の幻想的な風景はとても印象的でした(写真12)。

 

 

今回の台湾訪問は1週間という短期間で多くの先生方と出会うことができ、大変充実した時間を過ごすことができました。台湾の人の国際的な視野を持った考え方は、私には大いに刺激になりました。台湾での滞在中、ほぼ一緒に行動し面倒をみていただいたDr.Chengには心より感謝申し上げます。台湾という国やそこで暮らす人々の素晴らしさに感動し、今後とも交流を続けられたらと思っております。

最後にこのような機会を与えてくださいました清水克時理事長、岩本幸英前会長、川端秀彦国際委員会委員長をはじめとする日本小児整形外科学会の先生方にこの場をお借りして心より感謝申し上げます。