2012年前期Murakami-Sano-Sakamaki Asia Visiting Fellowship

 

 今回私は2012年前期Murakami-Sano-Sakamakiフェローシップでトルコのアンカラに行って参りましたので、御報告させていただきます。

この度トルコ訪問することになったのは、亀ヶ谷前国際委員長にご紹介いただいたことがきっかけとなりました。
紙面をおかりして深謝致します。

まず、トルコという国についてですが、地理的にはアジアの西端に位置し、ヨーロッパと歴史的にも関係の深く、親日として知られる国です。
黒海とマルマラ海をつなぐボスポラス海峡がアジアとヨーロッパの境界であるとされています。
トルコは人口は7472万人、平均年齢29.7歳と、非常に若い国でもあります。
国民の99%以上はイスラム教ですが、食事や服装も含めて厳格なイスラム教というわけではないようです。

そのトルコの首都アンカラで、Hacetepe大学のMuharrem Yazici教授に2週間お世話になりました。
アンカラ空港の送迎から手配していただきました。
滞在中は教授だけではなく、フェローとして教授のもとで研修中のAli Fuat Karatas先生に、移動や食事までサポートしていただきました。
彼は私がお世話になる1カ月前まで約1年間、アメリカのデュポンでリサーチフェローを経験しており、年齢が私と同じで、私にとって非常に刺激になりました。

現在Muharrem先生はTDV Private 29 Mays Hospital(100床、うち25ICU、手術室は5)という私立病院で主に手術を行い、個人のクリニック(何人かの教授がそれぞれオフィスを構え、レントゲンの撮影もその建物内で可能)で外来患者を診ておられます。
主に側弯症、脳性麻痺を中心に診療されていますが、その診療内容は多岐にわたり、また患者さんもトルコだけではなく周辺の国々(アゼルバイジャン、イラクなど)や、時にバルカン半島から訪れる患者さんもおられるということでした。

また、EPOS(ヨーロッパ小児整形外科学会)においても主要なメンバーとして御活躍で、EPOSのフェイスブックの写真にはいつも入っておられる印象があります。

 

さて、研修内容ですが、2週間の研修中は、トルコにおける冬休みということもあり、多くの症例を見学できました。午前中は主に病院での手術見学でした。1例目から清潔の状態で入らせていただきました。
2週目には助手として参加させていただく機会もあり、貴重な経験でした。手術の内容は小児のgrowing rod関連(入れ替え、延長)や脳性麻痺患者の軟部組織解離、股関節脱臼、多発性関節拘縮症に伴う膝関節屈曲拘縮に対する手術などで、どれも勉強になる手術でした。
手術室では様々な職種の方から、トルコ語がほとんど話せないにも関わらす、温かく対応していただきました。私に英語が通じるとわかってもらえると、医師はほとんどの人が英語に堪能なので、色々な話ができて楽しかったです。中でも脳外科の教授には大後頭孔拡大術を案内していただき、とても親切な説明で嬉しかったです。

午後は、Yazici先生は病院とは別のクリニックで外来をされるので、そちらに移動して見学しました。
基本的に3割負担の保険診療で、一人30分の時間をとりながら、丁寧に診察されていたのが印象的でした。外来の症例もまた、小児整形外科全般にわたる疾患を扱っておられました。
その中では特に、トルコにおけるDDH検診の問題点や、種々の装具作成方法など、日本との相違点を確認しながら、今後の自分の診療に生かせることがいくつか見つかったことは私にとって大きな収穫でした。

 

 

このように、Muharrem Yazici先生にお世話になりながらトルコの小児整形外科を見学できたことは、またとない素晴らしい経験となりました。

最後になりましたが、このfellow shipを創設された故 村上寳久・故 佐野精司先生、

坂巻豊教先生に心より感謝を申し上げるとともに、機会を与えていただきました清水克時理事長、川端秀彦国際委員長、ならびに日本小児整形外科学会の皆様に心より御礼申し上げます。

滋賀県立小児保健医療センター
整形外科
原田 有樹

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