赤ちゃんの股関節脱臼 ―正しい知識と早期発見のために―

1. はじめに |2. 日本小児整形外科学会「先天性股関節脱臼予防パンフレット」|3. 生まれてからの予防(股関節によいこと)
4. 股関節によい抱っこの方法|5. 股関節によいおむつの当て方・チェックのポイント|6. 股関節によい衣類とおくるみ
7. 向きぐせへの対応|8. 股関節脱臼の早期発見のために|9. 股関節脱臼のリスク因子
10. 股関節脱臼の診断方法(検査法)|11. グラフ(Graf)法について|12. エコー(超音波)検査の実際
13. 乳児股関節二次健診受け入れ医療機関|14. 乳児股関節脱臼の治療|15. リンク

2021年10月17日制作
2021年11月6日公開
2023年12月10日最終更新

日本小児整形外科学会、日本整形外科超音波学会からの正しい情報を集めた発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)の解説

解説動画「先天性股関節脱臼予防と早期発見の手引き」(4分25秒)
日本小児整形外科学会健診委員会作成(2022年)

1. はじめに

生後3か月女児 左股関節脱臼

赤ちゃんの心配な病気は生まれてすぐにわかるものが多いのですが、股関節の脱臼は生まれてすぐよりも、しばらくしてからわかることがほとんどです。それは生まれた後、股関節によくないことが影響して脱臼に進むことが考えられています。もし脱臼があれば必ず治療をしなければならず、その治療結果によっては手術が必要な場合もあり、また大人になっても後遺症が残ることもあり、長期にわたり心配な病気です
ましてやお母さんやご家族で脱臼している人がいれば、その苦労を味合わせたくないと、生まれてから健診を受けるまで、たいへんな心配を抱えられることでしょう


このページでは保護者の方々への注意点、予防法、診断法について解説しますので参考にしてください
1歳を過ぎてから判明する『診断遅延例』を根絶するため、適切な時期での診断のためにも健診だけでなく保護者のみなさまからのチェックも重要と考えています。ぜひ一緒にチェックして、心配がない場合でも股関節によい予防活動をしてみましょう

 

 

2. 日本小児整形外科学会「先天性股関節脱臼予防パンフレット」

まず大切なことは正しい情報を知ることです。そのために学会より啓発のためのパンフレット、手引きが作成されています。これらを基本としてよりわかりやすくを心がけて解説します。保護者の方への解説資材は、動画を含めた以下の3つです

クリックして拡大

PDFファイル


動画で学ぶ股関節脱臼(3分53秒)2017年改訂版

3. 生まれてからの予防(股関節によいこと)

赤ちゃんの股関節脱臼は、生まれた時にすでにはずれている病気もありますが、ほとんどは生まれた後ではずれてゆきます。ということは日常の扱い方で悪くもなり、また良くもなるということです。知らないうちに股関節に悪いことをしないように、股関節によいことを学び脱臼を予防しましょう。
赤ちゃんはO脚で、カエルのようにお股をM字に開いているのが正常で、股関節の動きを自由にさせる扱いはたいへん良いことです


 

しかし”おくるみ”や厚手の衣類など股関節の動きを制限したり、O脚を直そうと脚(下肢)を真っすぐに伸ばしたり、タオルをひざに巻き付けたりするようなことは股関節に悪いということは知っておきましょう



 

4. 股関節によい抱っこの方法

↑股関節を曲げて開いている↑ ↑股関節が閉じて伸びている↑

抱っこするときに、脚(あし)が伸びた状態でなく、お股を開いた状態で抱っこするたて抱っこ(コアラ抱っこ)を心がけましょう。よこ抱っこやスリング使用は股関節が内股に閉じることが強制されますので、股関節にとってよい状態とは言えません。どうしても使用するときは、お股が開くように注意しましょう


 

5. 股関節によいおむつの当て方・チェックのポイント

 

股関節が良い状態に開くためには、おむつの当て方が大切です。おむつの当て方が低い(足先方向にずれている)と、サイドギャザーで太ももが開くのを邪魔されてしまいます。おむつ交換の時に、股関節の前外側の皮膚に赤みがあれば、おむつが低いためにこすれていたことの証拠です。ウエストテープがおヘソの高さにくるようにチェックしましょう。オヘソが見えているようなら、おむつが低いか、おむつサイズが小さくなっているかを示していますので改善しましょう。おむつを付けた直後、必ずお股を開いてみて外側に食い込みがないかをチェックしましょう。おむつが下にずれると脚が短く見えよくない状態です。おむつをしっかり上につけて、脚が長く見える“ハイレグおむつ”を心がけましょう

 

6. 股関節によい衣類とおくるみ

衣類の注意点

股関節のために脚(あし)を自由に動かせたほうがよいことはご理解いただけたと思いますが、実際はどうでしょう。日本には寒い冬もあり、アフリカのように赤ちゃんを裸にしておくわけにはいきません(実際アフリカには股関節脱臼はほとんどありません)。カゼをひかせてはいけないと、厚着をさせ、足が冷えないようにとあし(脚)までしっかり服を着させることでしょう。お股の間までボタンで止めてしまう衣類は、もしサイズが小さければ、股関節の動きをじゃましてしまうため要注意です。お股のボタンはとめずヒラヒラと自由さを保ってあげてください。事実秋冬生まれの赤ちゃんに股関節脱臼が多いことは、衣類による防寒対策が影響していることを証明しています。お部屋を暖かくして薄着、もしくは下半身を自由にする育児を心がけましょう

 

 

股関節によいおくるみ(Swaddling)の方法

股関節によいおくるみ(Swaddling)の方法

夜泣きでぐずる赤ちゃんのための“おくるみ(Swaddling)”“おひなまき”といった手法がなされ効果があるようです。これらは赤ちゃんの体を布で巻きつけることで、抱っこされた感覚を与え安らぎを与えるようです。手の離れない”置くと泣く”赤ちゃんには、さすがのお母さんも疲弊し途方に暮れ、精神的に追いつめられたりします。場合によっては股関節脱臼よりも深刻な事態なのかもしれません。ですから我々はこれらを行うことを否定する立場ではありません

 

 

 

安全なおくるみのやり方(動画20秒)
→より詳しいYouTube解説(6分37秒)もあります

しかし、ここまで勉強していただけた保護者の方ならもうお判りでしょう
脚(あし)までグルグル巻きになると、股関節が伸びた悪い状態になってしまうのです。抱っこされた感覚は上半身だけの巻きつけで効果があるようですので、上半身と手を巻きつけた後、脚(あし)は巻かずにしっかりと開く状態を確認しましょう
このことは海外の小児整形外科でも問題になり、“安全なおくるみ”のための解説動画(20秒)が公開されています。英語ですが見ればやりかたがわかりますので、ぜひ参考にしてください

 


 

7. 向きぐせへの対応

右向きぐせのある赤ちゃんが典型的な非対称性緊張性頸反射(ATNR)により、左脚(あし)は立てひざの不良肢位になっています

赤ちゃんの6割ていどには向きぐせがみられますが、3か月を過ぎると首の筋肉が発達して自然に改善します。しかし向きぐせ方向と反対側の脚が立てひざ姿勢になっていたり、一方の脚(あし)が伸びた状態で開脚にならなかったりする場合は注意しましょう。後頭部が扁平(斜頭:いわゆる絶壁)になっていたり、股関節の開きが硬くなっている場合には、向きぐせへの対策をとりましょう。①向きぐせと反対から接する(添い寝・授乳・抱っこの向き)、②向きぐせ側の頭と体の下に折りたたんだバスタオルを差しこんで少し持ち上げる、などが有効です。こうして反対側へ向くための筋力を少しずつ育てることで、向きぐせの解消につながり、さらには股関節への悪影響をなくすことで股関節脱臼を防ぎます

右への向きぐせがある赤ちゃんで、後頭部右側が扁平(斜頭)になっています。また左ひざが股関節に悪い内転位になっています。バスタオルや枕などによる向きぐせへの対応により左股関節の不良肢位は改善されています。こうした毎日少しずつの予防の積み重ねで脱臼が予防されます

右への向きぐせがある赤ちゃんで、後頭部右側が扁平(斜頭)になっています。また左ひざが股関節に悪い内転位になっています。バスタオルや枕などによる向きぐせへの対応により左股関節の不良肢位は改善されています。こうした毎日少しずつの予防の積み重ねで脱臼が予防されます

この赤ちゃんでは斜頭(後頭部の扁平)が明らかで、強い右への向きぐせがあります。体の右側にたたんだバスタオルやまくらを入れると左の股関節が開きやすくなります。こうした毎日少しずつの予防の積み重ねで脱臼が予防されます

抱っこの向き

右への向きぐせがある赤ちゃんの場合、これと反対に抱っこ(保護者の右ひじに頭をのせる方向に)するほうが改善策になります

右向きぐせの場合
右ひじに頭をのせる→

左への向きぐせがある赤ちゃんの場合、これと反対に抱っこ(保護者の左ひじに頭をのせる方向に)するほうが改善策になります

左向きぐせの場合
←左ひじに頭をのせる

右利きの保護者では「抱っこ1」のように抱っこすることが多いと思います。この時赤ちゃんは右を向きがちになります。ですから、右への向きぐせがある赤ちゃんにとっては、反対に抱っこする「抱っこ2」のほうが改善策になります。保護者の右うでに赤ちゃんの頭をのせると、赤ちゃんは自分の左側にある保護者の顔を見ようとする運動がくり返され、左へ向く筋力がアップします。ちなみにこの“よこ抱っこ”は、お股の間に手をまわして股関節が内転しないようにしています


8. 股関節脱臼の早期発見のために

左股関節開排制限(床から20°以上)のある赤ちゃん

 

左股関節開排制限(床から20°以上)のある赤ちゃん

「もしかしたらこの子は股関節脱臼じゃないかしら?」と疑うことが早期発見につながります。そのためのチェックポイントとしては股関節の開きの硬さ(開排制限)やシワ(皮膚溝)の非対称があります。これを見たらすぐにチェックしてみてください。股関節脱臼は早期発見により安全に治療ができ、後遺症を残さなければ手術をすることもなく全く正常に一生を過ごせます。そのために日本では乳児健診(生後2-5か月)で股関節のチェックがなされてきました。しかし診断遅延例が1万出生に1児(年間100児)の割合で存在するため、われわれは不十分と考えています。そのために下記のリスク因子などにより保護者の方々からも積極的にチェックしていただき、積極的に受診していただきたく思っています

(左鼡径・大腿皮膚溝非対称)

 

左鼡径部と大腿中央部に右とはちがって深く長い皮膚溝(シワ)のある赤ちゃん

通常股関節脱臼のチェックは、乳児健診(生後2~5か月)での一回勝負でしたが、われわれは複数回のチェックをお勧めしています。開排制限2つのリスク因子があれば、生後1~2か月での保健師訪問や1か月健診で相談のうえ紹介受診を推奨します。通常の乳児健診は複数回チェックの最後の砦とすることで診断遅延を根絶することにつながると考えています。早期発見と予防のためのポイントをまとめた動画も制作しました。ぜひご覧ください

 


解説動画「先天性股関節脱臼予防と早期発見の手引き」(4分25秒)


9. 股関節脱臼のリスク因子

乳児股関節脱臼の3つのリスク因子

股関節脱臼の家族歴から心配されるお話をしたように、リスク因子として①家族歴があるとリスクが5~12倍となる報告があります。さらに②女児が男児より4~9倍③逆子(妊娠後期の骨盤位)も5倍といったリスクが明らかにされており、この3つのうち2つ該当する場合、専門医療機関で検査してもらうことを推奨します。これら3つのリスク因子は生まれたときに分かっていますので、乳児健診(生後3-4か月)を待たずに、早期に受診する先進的な取り組みを各地で始められています

保健師の赤ちゃん訪問、生後1か月健診や小児科での予防接種などの際に、相談されてもよいと思います。ただし乳児健診よりも早期に受診する場合、レントゲンよりもエコー(超音波)検査が望ましいことは重要なポイントです。日本小児整形外科学会の赤ちゃん健診後の股関節検診かかりつけ施設をご参考に、予約の上受診されることをお勧めします


10. 股関節脱臼の診断方法(検査法)


診断にはエコー(超音波検査)が極めて有用です。これまで日本では開排制限(お股の開きが硬いこと)とレントゲン(X線)検査での診断が行われてきました。完全に脱臼している場合には、骨の大きなズレのため診断が可能です。しかし今にもはずれようとしている亜脱臼のような微妙な状態は、レントゲン(X線)ではどうしてもわかりにくいのが事実です。その理由は開排制限のない関節の柔らかい脱臼が存在すること、そして股関節の大半が軟骨でできていてレントゲンには写らないことがあげられます。レントゲン検査を受けたにもかかわらず、あとから脱臼がわかったような場合、そうした微妙な状態であったと考えられます


生後9か月での診断遅延例(赤ちゃんでは軟骨しかないところに豆状の骨が出現していて、レントゲンでも脱臼がわかりやすい)
濃厚な家族歴のある生後3か月の女児で、左股関節はこれから脱臼していこうとする脱臼の状態で治療が必要であるけれど、レントゲン(X線)ではわかりにくい

 

エコー(超音波)では軟骨もしっかり見えるため、この微妙な状態までわかるような検査システムになっています。世界的な標準方法がグラフ(Graf)法です。海外の股関節脱臼のための健診先進国では、必ずエコー(超音波)で検査することになっています

右股関節は正常像で、左股関節は脱臼したばかりのレントゲン(X線)では非常にわかりにくい状態ですが、エコー(超音波)では正常とは全く違う像で見えるため見逃しがありません

お母さんなど家族に股関節脱臼の家族歴がある場合、自分と同じような苦労をさせていたくないと、大変心配になり、早く脱臼がないだろうか心配になります。また股関節の開きが硬いので、受診したのに異常なしと言われても心配な場合もあります。そうした心配が払拭されない場合には、ぜひエコー検査のできる病院の受診をお勧めします。各都道府県で専門病院は必ずありますので、電話でお問い合わせの上受診ください

 


 

11. グラフ(Graf)法について

グラフ法による標準画像から5つに分類され、下3つでは治療が必要です。正常と脱臼とでは全く見え方が違うので、エコー〈超音波)検査で正常だった乳児の中から脱臼が生じることない信頼性の高い検査法です(新生児でも症例報告となるほど稀です)

グラフ法の祖オーストリアでは1992年から生まれた赤ちゃん全員にエコー(超音波)をする健診体制がとられ、それにより入院治療・手術治療を必要とする赤ちゃんが激減しました。これをお手本として日本でも生まれた赤ちゃん全員にエコー(超音波)検査を実施しているところもあります。長野県下諏訪町(1992年~)、新潟市(2002年~)、島根県江津市(2010年~)の3か所から論文報告があり、その報告の赤ちゃんの合計64886児においてエコー(超音波)正常だった中からの診断遅延例の発生はゼロでした。そしてそれは現在までゼロであり続けていることから、見逃しがおこらない高い信頼性がわかります

 


 

12. エコー(超音波)検査の実際

実際にはどのような検査なのでしょうか。エコー(超音波)自体は妊娠中に経験されたようにゼリーをつけて超音波の出るプローブをそっとあてるだけです。赤ちゃんの場合じっとはしてくれませんので、横向きで納まる専用の台の中に赤ちゃんを入れて検査します。横向きで左右を見ますので、片側が終わったらグルりと向きを変えます。両側の検査で、わかりやすい場合約1分で終わります

乳児健診でのエコー(超音波)検査の実際
1分で両側正常とわかります!(68秒動画)

脱臼のエコー(超音波)像(14秒動画)

正常
脱臼(グラフ分類3型)
全く違う像なので見間違えがありません

このグラフ法を実践したい希望は小児科医、検査技師、放射線技師に広がっており、なかには予防接種の際に股関節エコーをされている小児科クリニックもあります。われわれ赤ちゃんにかかわる整形外科ドクターは、こうした多職種と連携を進め、診断精度の高いエコー(超音波)を使って、股関節脱臼の診断の遅れを根絶したい!
と本気で考えています。まだまだエコー(超音波)が普及するには時間がかかりますが、股関節を心配される保護者の方々のエコー(超音波)検査のご要望にも背中を押していただき、推進してゆきたいと考えています。ぜひ応援ください

 

●脱臼予防しよう!①コアラ抱っこハイレグおむつ向きぐせ対策
●早期発見しよう!①家族歴 ②女児 ③逆子(骨盤位)
●チェックポイント!①開排制限(開きが硬い)②しわの左右差
●早く正確に診断するには エコー(超音波)

13. 乳児股関節二次健診受け入れ医療機関

実際に赤ちゃんが生まれ心配な時、どこの医療機関にかかったらよいでしょう。日本臨床整形外科学会および日本小児整形外科学会では、責任をもって赤ちゃんの股関節を診察できる医療機関の全国調査を2020年に行いました
そしてついに2022年公表となりました!残念ながらエコーのできる施設までは調査させていないので、エコー(超音波)検査を希望される場合は、電話でお問い合わせの上受診ください

01:北海道
02:青森県 03:岩手県 04:宮城県 05:秋田県 06:山形県 07:福島県
08:茨城県 09:栃木県 10:群馬県 11:埼玉県 12:千葉県 13:東京都 14:神奈川県
15:新潟県 16:富山県 17:石川県 18:福井県 19:山梨県 20:長野県 21:岐阜県 22:静岡県 23:愛知県
24:三重県 25:滋賀県 26:京都府 27:大阪府 28:兵庫県 29:奈良県 30:和歌山県
31:鳥取県 32:島根県 33:岡山県 34:広島県 35:山口県
36:徳島県 37:香川県 38:愛媛県 39:高知県
40:福岡県 41:佐賀県 42:長崎県 43:熊本県 44:大分県 45:宮崎県 46:鹿児島県 47:沖縄県

日本臨床整形外科学会所属の施設につきましてJCOAホームページをご参照ください(別サイトへジャンプします)
宮城県・千葉市のかかりつけの最新情報は各地域からの配布物等をご参照ください


14. 乳児股関節脱臼の治療

残念ながら脱臼していた場合には必ず治療が必要となります。赤ちゃんの股関節が整復される肢位をとりやすくする装具を装着します。この装具をリーメンビューゲルといいます。股関節が屈曲して外転していると整復されるので、ベルトによって股関節が伸びないように曲げた状態を保ちます。この装具にて外来治療にて(入院せずに)8割が整復されます
しかしなかには1割ていど軟骨を痛める大腿骨頭壊死を生じることがあり注意が必要です。股関節の開きすぎは軟骨を痛める原因の一つになりますので、それを予防するパッドを使用します。股関節のおさまりが長く悪い場合にも軟骨に負担がかかり、1~2週間で整復されない場合に、無理せず一旦中断することがあります

1歳以降で発見された場合、このリーメンビューゲルでは整復されず軟骨を傷めるリスクが高いため、まず入院をしての牽引療法が必要になります。約2ヵ月の入院が必要で、赤ちゃんを寝かせた状態で、脚を下方→上方→外側へ順に引っ張り、固くなっている股関節をやわらかくしてから徐々に整復にもっていきます。これで整復できればギプスで固定して安定するのを待つことが必要です。赤ちゃんにも保護者にも大変な負担となりますので、早期診断がとても大切なのです。牽引治療でも整復されない場合には手術で股関節を整復せざるをえなくなり、全身麻酔も必要なので、さらに大きな負担となります。整復成功率はリーメンビューゲル装具により約80%、牽引療法により約15%で、残りの約5%で手術を必要とします。生後半年までの発見で、入院の必要な治療のほとんどが避けられます。保護者の気づきもとても重要で、おかしいなと思われたら、ぜひとも早期に受診をしてください!

後遺症について

股関節脱臼が無事整復されのちは、股関節の成長を定期的なX線検査などで見守りますが、股関節のかぶりが浅い「寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)」という後遺症がひどい場合、骨盤補正手術(骨盤骨切り術)を行います。できれば就学前に大きな治療を終わらせておく治療方針となります

 

 



15. リンク

(PDF)「乳児健康診査における股関節脱臼一次健診の手引き」(2015年)健診医用

 

 

 

(PDF)「乳児健康診査における股関節脱臼二次検診の手引き」(2017年)整形外科用

日本整形外科学会
日本小児整形外科学会
赤ちゃん健診後の股関節検診かかりつけ施設
日本整形超音波学会
日本股関節研究振興財団(病気の解説)
シルミルマモル
International Hip Dysplasia Institute(英語)

制作:星野弘太郎

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